県道12号線を加茂川沿いに走る。
黒瀬ダムの湖畔を過ぎ、
石鎚ふれあいの里を横目にしばらくすると、
三碧峡で加茂川を渡る。
左に行くと、西之川石鎚ロープウェー乗り場。
右に行くと、林道石鎚折掛線を経て高瀑休憩所に至る。
その途中、
路面が舗装からダートに変わるところが土居集落の跡だ。
ここには諏訪神社があり、毎年11月3日に秋祭りが催さる。
昭和26年までは千足山村、昭和30年までは石鎚村、
それ以降は小松町石鎚と変遷してきたこの山村。
かつては千人以上いた住民も、
昭和の高度成長期のあおりをくらい、
過疎化のうきめに会い人口減少、
今や三世帯五人が生活するばかりとなってしまった。
しかし、かってこの山村に暮らした人々やその二世三世が、
年に一度、文化の日に里帰りして、
諏訪神社に獅子舞を奉納する秋祭りが、
ここ三十数年継続して行われている。
いつか拝見したいと思っていた諏訪神社秋の大祭。
今年は自分の休日とうまく合致したので、
楽しみにこの日を待った。
晴天だが気圧配置が冬型で肌寒い朝、
土居集落まで車を走らせる。
すでに多くの車が道端や空き地に停まっていた。
赤色に塗られた契橋(ちぎりばし)を渡り諏訪神社境内に入ると、
「ひさしぶりやの」「変わらんなぁ」なんて再会を喜び、
旧交を温める言葉が飛び交っていた。
本殿での神事が終わると、やがて境内で獅子舞が始まる。
太鼓二張りに合わせて、
子供四人が雌雄二頭の獅子を操りながら跳ね踊る。
それぞれにゆかりのある演目だろうけど、
意味合いは判らなかった。
かつては、もっともっと賑やかで熱気のある秋祭りだったのだろう。
村の十八の集落から老若男女がこの諏訪神社に集まる。
娯楽の少ない山村で、
祭休みは最大の楽しみの一つだったにちがいない。
若い男女が二人で話をすることが不謹慎だった時代には、
「男女交際の絶好の機会だろうな」なんて想像しながら、
艶かしい獅子舞を見つめている自分がいた。

