先日図書館に立ち寄ったとき、ああそうだと「父の詫び状」を借りてみた。
書名は以前から知ってたわけだが、おそらく学生時代に見たTVドラマ「阿修羅のごとく」が
今も頭の奥すみに残っているから、読んでみようと閃いたのかもしれない。
「阿修羅のごとく」は14インチのTVを実家からもらってきて間もない頃に下宿屋で見ていた思い出がある。
テーマ曲がトルコの軍楽で、チャルメラのような音色のうすら悲しくも、どこか人の情念怨念を表すような、
コップの底に溶けずに残ったココアみたいな重たい印象だった。まさに「阿修羅のごとく」なわけである。

そんな作者の随筆だから、今頃になったも読む機会を得たのが、年相応で良いタイミングだったのかと思う。
頁をめくると、小さい頃学校の休みになると泊まりに行った祖父の家を想い出す。
家の造りであったり、食べ物のことであったり、集まる人々であったり。
「ああそんな景色や空気だったよな」、と久しく忘れていた子供の頃の気持ちや事々を、記憶の中から掘り返してくれた。